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回帰したサケはなぜ釣れる??Vo.2
産卵行動中のサケたち
シロサケの産卵の瞬間。撮影は市村政樹さん
標津サーモン科学館の魚道水槽は、11月になると底面に砂利を敷き、シロザケの産卵行動を展示している。
シロザケ、カラフトマスは海洋生活期間中、群れで生活しており、個体間同士の争いはまず無いが、産卵時期になるとその状況が一変し、他の個体に対して攻撃的になる。オスはメスめぐってオス同士激しく争い、メスは、産卵場所をめぐってメス同士激しく争う。極端なことをいえば、自分とペアを組んだ異性を除いて、全て敵となるわけだ。この産卵行動中に自分の子孫を残すための本能が“釣れる”大きな要素の一つだと考えられる。

これまで、この水槽で数多くのシロザケたちの産卵行動を見てきたが、攻撃的な側面も個体によりかなり差があり、異性を獲得するための駆け引きも実に多彩だ。産卵行動中の彼らは実に“個性”豊かだと思う。
メスをめぐるオス同士の争い
ヤマメに対する“威嚇行動”
魚道水槽では、シロザケの他にヤマメも入れている。このヤマメたちは、イクラが大好物で、産卵の瞬間に小石の間に頭を入れイクラを捕食する。そのためか、産卵行動中のシロザケの多くは、オスメスともに、産卵場所からヤマメを排除しようとかなり激しく追い掛け回す。この際、大きな口をあけて追い立てる個体もいる。ヤマメはすばやく逃げるため、まだ、“捕食”された個体は見たことは無いが、これがルアーやフライであったら簡単に口の中へ入ることになるだろう。もっとも、ヤマメへの攻撃は個体差もあり、ヤマメが目の前をうろついていても全く気にも留めない個体も少なからずいる。
ヤマメを威嚇するオス(左はホリを掘るメス)
落ち葉へも“威嚇行動”
魚道水槽には大量の枯葉が舞い落ちていることが多い。この落ち葉が水中で舞うと、攻撃を加えるシロザケを見ることもある。
以前、見たオスは印象的だった。その日、新しいペアを水槽に入れ、しばらくすると、ペアになっているメスが泳いだ後に出来た流れに落ち葉が舞い上がると、そのオスは、口を大きく開けて猛然と襲い掛かった。このオスが落ち葉に襲い掛かると、その後に水流が出来てさらに舞い上がり、その落ち葉に当たりかまわず攻撃を仕掛ける、まさに“いたちごっこ”の状態が続いた。
翌日はこのオスも、落ち葉が生物でないと学習したのか、ヤマメは激しく追いかけるものの、落ち葉に対しての攻撃はほとんど見られなかった。
産卵後でも釣れる
産卵場所をめぐるメス同士の争い
忠類川では、完全に放卵し、お腹がペチャンコになったメスが釣れる。忠類川での釣りが始まった当初、何でこんなサケたちが釣れるのか、質問を受けることが何度かあった。
シロザケのメスは、お腹の中の卵を3~5回に分けて産むのだが、産卵を終えた後でも、長いものでは一週間ほど生き残り、産卵場所を守る。メスの産卵行動を観察していると、産卵後のメスは、縄張り意識が強くなる傾向がある。あまり知られていないことが、砂利の中へ産んだ卵を掘り起こす、つまり、“危害”を加える可能性があるものは、実は他のメスなのだ。そのためか、特に他のメスに対しての攻撃は凄まじいものがある。産卵後でも体力が比較的残っている個体は、自分よりも一回りも大きいメスを追い払うことさえ珍しくない。
したがって、産卵後のメスが釣れる要因は、自分の産卵場所に侵入した“異物”を排除する“母性本能”によるものと考えられる。産卵行動中のメスは正直、釣りやすいのではないかと思うのだが、出来ればそっと見守っていただきたい。
市村政樹氏プロフィール
Ichimura Masaki
サケ科魚類展示数で国内随一を誇る標津サーモン科学館の学芸員。サケ科魚類の研究や子どもたちへの教育に活躍。1967年生まれ。東京水産大学卒(現 東京海洋大学)。執筆:北海道新聞 ネーチャー通信(金曜日生活欄)、つり人社「ノースアングラーズ」 北の渓魚大全 、つり人社「ノースアングラーズ」標津便りなど
大水槽での出来事
斃死したシロザケのメス(口の中にはブラウントラウトが入っている)
標津サーモン科学館の大水槽は海水の水槽で、例年、標津沿岸に回帰したシロザケ、カラフトマスを展示している。本来、サケ科魚類は、海水中で産卵しても、精子が動かないため、受精出来ない。つまり海水中で産卵しても子孫を残すことが出来ないのだが、この水槽では産卵行動を行い、実際に産卵する個体もいる。
以前、この水槽にいるイトウなどのエサに死亡したブラウントラウトを入れた際、産卵行動中のシロザケのメスが舞い降りてきたブラウントラウトに食いつき、翌日、ブラウントラウトを口に入れたままへい死してしまった。捕食の瞬間は見ていないので、推測だが、捕食よりも威嚇の要素によるものと思われる。きわめて稀な、興味深い例なので、紹介しておく。

次回は、まとめ。回帰したサケたちを釣る方法について紹介したい。
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